ユーフェミアの騎士発言シーンを見て妄想したのはこんな話でした。ユフィ→ルル。
色々嘘だらけですが勢いで読んで欲しいです。こんなんばっかで申し訳ない。
(護れなかったものを思い出したの。貴方とそう年の変わらなかった私が護るだなんて驕ましいかもしれないけれど、それでも本当に。)
そのパイロットが分かったとたん口々と湧き上がる白いナイトメアへの非難の声を聞きたくなくて耳を塞ぎたかった。いっそやめてと子供のように叫んでしまい。どうしてそんな酷いことが言えるの。彼は今までも私たちを護ってくれていたじゃない。それまで英雄のように讃えていたくせに自分たちと違う出生というだけで掌を返したように湧き上がるそれに悔しさを感じると共に幼いころの記憶が蘇った。もう七年前のこと。本国のアリエスの離宮で起こったマリアンヌ皇妃殺害の事件。それは幼いユーフェミアにも少なくない衝撃を持って心に残ることとなった。
殺されたマリアンヌ皇妃に姉と兄らが憧れを持っていたことを知っている。遠目から皇妃を眺める姉の瞳は憧憬の色に満ちて恋をする少女のようなそれに、可愛らしい、そう実姉を思ったのは一度だけではなかった。
それだけではない、その子供たち、ユーフェミアにとっては一つ上の兄がとても優しいことやその幼い妹がとても可愛らしく微笑んでくれることも知っていた。年の近かった自分たちは出会えばいろんな話ができたのだ。ユーフェミアとナナリーが話すのを少し遠巻きに、それでも優しい目をして見守る兄がユーフェミアは好きだった。優しい彼が兄だということが自慢でもあった。
しかし口さがない貴族たちは彼らを庶子の出と噂する。ユーフェミアのご機嫌取りに賛辞を口にするその裏で大好きな兄やその母への酷い言葉を吐くのだ。彼らは自分たちと何も変わらない大事な兄弟なのに。憤る幼さを何度姉に窘められただろう。それに反抗しようとして窘める姉の方が悲しい顔をしているのに気づいて何もいえなくなってしまった。なんて酷い。それはたった七つにも満たない子供が抱くには相応しくない感情だっただろう。しかし兄は母と妹を必死で護ろうとしていた。それをただ純粋に羨む気持ちもどこかにあった。大好きな兄に護られている妹に少しの嫉妬をしているのに気づき己を恥じたこともある。思えば自分は幼い恋の様な感情を兄に対して持っていたのかもしれない。けれどそれだけだ。自分は彼のために何ひとつ出来なかった。母を殺され妹を父に否定された彼を慰めることすら自分には。
母の皇妃が殺されて間もなく兄妹は本国を出て、そして二度と再会できることもなくなってしまった。彼はたった十歳だったのに。ユーフェミアが死んだ兄の年を追い越すのは直ぐだった。そして一つ一つその兄が辿ることのなかった年月を重ねるたびに酷い罪悪感にさいなまれるのだ。護れなくってごめんなさい。大好きだったのに、大人たちに何もいえない弱い私でごめんなさい。たった一言でも声を上げればよかった。湧き上がるだけの後悔は償う場所もなく心へ堪る。そうして何年もたった。
だから、今
「私が騎士とするのは、」
声が震えそうになるのを必死で抑えて出来るだけ厳かに聞こえるように意識して声を上げた。私にだって何か一つだけでも護れればいいのに。今はその思いだけだった。だって非難される異国の少年に記憶の中の幼いままの兄の姿が被ってしまったの。だから、今度こそ私が。そう言ったら貴方は笑ってくださいますか?
(ルルーシュ)
私のお兄様。