騎士拝命の儀式後捏造。そこはかとなく有り得ないロイドとスザク。しかしありがち。
本当はお題として書いてたのであとで何食わぬ顔でテキストページにあげておきます。とりあえず18話放送前に滑り込み。
騎士としての儀式を終え、華やかだが気の抜けない宮殿から開放されたスザクはようやく息を吐く。ブリタニア式の豪華さと言うものは日本の慎ましさを未だ誇りと思うスザクにとって少々煩わしいと思わざる終えない。スザクのために用意した、と主から渡されたこの式典の衣装にも正直辟易してしまう。この飾り立てられ汚れを知らぬ純白の白は、何の打算も含まないであろう彼女の純粋な好意を思わせてスザクは人知れず眉を顰めた。この何も知りませんよ、と言わんばかりの純白を見るたびにまるで自分の罪を嘲笑われているかのような気持ちになる。そんな自分が慈愛の姫と謳われるユーフェミアの騎士になるとは。気の早いマスコミでは早くも白の騎士とスザクを謳い始めるものまで表れた。これはいったいなんの茶番なんだろうか。スザクの前でそれは遠い世界の出来事のように展開されている。(俺が欲しかったのはこんなものじゃなかったのに)整理のつかない頭であの学園のことを思い出す。こんな地位や名誉より、彼らと共に過ごせる時間のほうが何倍も価値があるもののように思えた。だってあの箱庭の学園でスザクの愛しい存在は心からの笑みを浮かべていたのに。それをスザクに与えたのはユーフェミアだった。そして奪ったのも他でもない彼女だ。
「酷いカオだねぇスザク君」
あのお姫様のナイトさまがそんな怖い顔してちゃ駄目だよ。からかうように掛けられた声にスザクは肩の力を抜く。飄々とした上司がスザクは嫌いではない。彼の姿を見てようやく自分が現実世界に戻ってきたような気持ちになった。先ほどまでその場に居たはずなのに彼から貴族の華やかさも禍々しさも感じない。スザクはそこで初めて自然に笑うことができた。
「考え事をしていたんですよ、」
「考え事ぉ?興味があるね。いったい何を考えていたんだい?」
常よりもずっと落ち着いた様子でロイドは尋ねる。その声音にスザクはロイドが全てを把握していることに気づく。そしてそれでも尚、スザクの口から本心を語らせようとする性格の悪さを内心苦々しく思いつつ笑みを深くすることで応えた。
「ロイドさんは白色って好きですか?」
「……好きじゃないなぁ」
一言応えた後、ふっ、とその薄水色から唐突に表情が消えた。そして今までには無い色をその瞳に宿したロイドはスザクに向き合う。そして静かな口調のまま、君は?と尋ね返した。もちろん、とスザクは笑う。
「僕も、大嫌いです」
それにロイドが満足げに頷いた。
真の忠誠はあの漆黒の紫電にのみ。と。